本日は電気安全(IEC60204-1)について書きます。
内容が濃いので電源断路器と感電までにしますね。
1:電気安全の目的
多くの機械は電気エネルギーで動いています。電気による動力回路、制御回路を適切に使用することで感電や火災などの事故を防いだり、制御の適切性やメンテナンス性を良くするために様々な安全上の要求が存在しています。
2:電源断路器
制御盤などで感電することなく安全に使用・保守するために、電気装置の元の電源(俗にいう一次側)を断路(OFF)し、電気装置内を無電圧にできるように下記要求を満たす電源断路器も設けることが必要なのです。
①国際規格(IEC60947-2、IEC60947-3など)の要求を満たした断路器あるいは断路用開閉器を使用すること
②ON位置(記号:○)とOFF位置(記号:|)を1ずつ備えている。(中途半端な位置はないこと)
③OFF位置でロックできる構造を備えていること(ロックアウト対応)。OFF位置でロックされている時はONに出来ないこと
④適切な遮断容量を持っていること
3:感電保護
基本保護、故障保護、PELVについて書きます。
3-1:基本保護
基本保護とは充電部などに直接接触することによる感電防止策です。
①エンクロージャによる保護
充電部に直接触れて感電することを防止するため、全ての充電部はエンクロージャの中に収納することが必須です。エンクロージャの代表例は制御盤や中継BOXなどの筐体です。エンクロージャへ要求される保護等級は、指の侵入を防止するためIP2X又はIPXXD以上です。エンクロージャの高さが低く、その上面に容易に接近可能な場合はIP4X又はIPXXD以上が要求されます。
②エンクロージャを開ける場合の要求
イ:扉を開けるには鍵又は工具が必要であること。電気取扱者など電気リスクを理解している人のみが開けることができることが重要です。
ロ:開ける時に内部の充電部は電源から切り離されて無電圧の状態になっていること。断路器とエンクロージャの扉はインターロックで構成され、断路器OFFの時のみ扉を開けることが出来ること。
③絶縁物による充電部の保護
絶縁物で保護は破壊しなければ取り除くことが出来ない絶縁物で完全に覆うこと。ここでの絶縁物の例は電線などがあり、塗料やワニスで塗ることは絶縁物とは見なされません。
④残留電圧に対する保護
電源OFF後の残留電圧が60V以上ある充電部品(コンデンサ)は、電源OFF後5秒以内に60V以下になるように放電すること。
⑤人体の届く範囲外への設置による保護(アームズリーチ外)
充電部をアームズリーチ外で設置することによる感電の保護で、充電部に無意識に接触することを防止します。具体的な数値はIEC60364-4-41に記載があります。
3-2:故障保護(間接接触による感電の防止)
故障保護は充電部と露出導電性部分との間に絶縁故障が発生した場合の危険状態を防止することで、危険状態になる接触電圧が発生しないことと絶縁故障になった場合は電源を自動的に遮断することが要求されます。
①危険状態になる接触電圧の発生防止
クラスⅡ(二重絶縁もしくは強化絶縁)の電気機器の使用が一般的です。間接接触を防止するために、基礎絶縁に加えて補助絶縁を加えた二重絶縁構造もしくは同等の強化絶縁構造を持つ機器を使用することで感電から保護します。
②電源の自動遮断による保護
絶縁不良、地絡、漏電などの発生時に漏電遮断器などの保護機器を使用することにより、自動作動にて電源を遮断して感電から保護することです。
3-3:PELV(保護特別低電圧)
人が感電しても危害を受けない程度の電圧を使用することで、感電から保護する考え方です。
①公称電圧は乾燥した環境では交流25V又は直流60Vを超えないこと。
②回路の片側もしくは供給電源の1点を保護ボンディング回路と接続していること。
③PELV回路用の電源は安全絶縁変圧器と同等の安全性を持つこと
4:保護ボンディング
保護ボンディングとは感電防止のための接地(アース)を指します。外部の保護導体へ各装置の保護導体、露出導電性部、電気装置の導電性構造部分、機械の構造部の導電性部などを接続します。
4-1:保護ボンディングへの要求
①接地線は熱的、機械的なストレスに耐えられる線を使用する。
②金属製のダクトなどを接地線の代用としない。
③電気機器が制御盤の扉に取り付けられている場合、扉と制御盤本体は接地線で接続する。
④漏電電流を素早く流すために、途中にスイッチやブレーカなどを使用しない。
⑤外部保護導体の断面積は、電源供給線の断面積に対して一定程度の断面積のこと
4-2:接地線への要求
①接地線の色は緑と黄の組み合わせを使用すること。
②接地線は機器自身を固定するネジ部分へ接続しない。
③接地線は共締めしない。
④接地線の渡り配線をしない。
⑤接地線の接続点には保護マーク又はPEを表示のこと。
電気は目に見えないため、回避が難しくさらに危害の程度も大きいため細かいルールがたくさんありますね。覚えることだらけで大変です。